2018.1.25
, EurekAlert より:
スペイン・バルセロナ国際医療センターの研究で、サイクリング専用道路ネットワークを拡張することによってかなりの健康効果と経済効果が欧州にはもたらされる可能性があるようだという報告。本研究は欧州委員会の資金提供によって行われた持続可能な移動手段アプローチによる身体活動プロジェクト研究の一環であり、167の欧州各都市からのデータをもとに自転車利用の可能なインフラストラクチャーについて分析したものである。これによると、自転車利用可能な基盤整備状態がサイクリングの移動手段としてのシェアに24.7%の割合で関連しているようだという。全ての都市でこの24.7%の自転車移動シェアを達成することが可能であれば、一年あたり10,000人の早期死亡リスクを低下できる可能性がある、と報告されている。このシェアは、割合としては市民の4人に1人が自転車を日常的な移動手段に利用しているという計算になる。
サイクリングロードのネットワーク長と移動手段シェアの関連性が欧州の都市市民の健康状態に影響を与えるという。本研究で行われた健康性評価によれば、移動手段をサイクリングに変更するだけで身体活動性の増加による健康効果が期待できるというのだ。この健康効果は、大気汚染や交通事故による悪影響を凌駕するものである、と研究者は指摘する。
もっとも大きい健康効果は、全ての都市の一般道路に自転車専用レーンを設けた場合というシナリオのものである。この場合、ロンドンであれば毎年の早期死亡を1,210件減少でき、次いでローマでは433件、バルセロナでは248件減少できると推算されている。そこまで理想的な環境が構築できないとしても、10%サイクリング専用道路を整備するだけで、自転車利用が有意に増加し、10%毎にローマで21件、ロンドンで18件、バルセロナで16件ずつの早期死亡を減少できるとしている。
さらに研究者らは経済効果についても試算を行い、サイクリングネットワークを増大させるためのコストと、早期死亡を予防する事の経済的効果を比較して検討した。結果、もっともコスト対効果の高いレートは10%サイクリングネットワークを増大させるというシナリオで、ローマで70対1、チューリヒで62対1、バルセロナで35対1の効果があると試算されている。
今回の研究では、サイクリングを利用するその他の決定因子については考慮されておらず、単純な比較しかできていないが、サイクリングネットワークを拡充することは各都市において高い優先順位を与えるべき政策課題であるということがハッキリしていると研究者はいう。これによって、健康的な選択をすることができる市民が増加する可能性があるのである。本研究の知見によれば、特に現在のサイクリング利用レベルの低いローマやバルセロナ、ロンドンなどの都市においてサイクリングネットワークの拡充による大幅な健康効果が望めるということがわかっている。
車の利用を減少させ、自転車利用を増加させることが素晴らしい健康効果を生むということが、再び明らかとなったのである。車の利用を魅力的でないものにするようなプッシュ的アプローチと、公共交通期間とサイクリングなどの移動手段をより魅力的にするようなプル的アプローチの両面から、欧州の都市市民の健康増大を図っていくことがもっとも良い方針であろう、と研究者はまとめている。
出典は『予防医学』。 (論文要旨)
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