2018.1.11
, EurekAlert より:
食品が長期保存できるように抗菌剤として使われる食品添加物の「保存料」だが、腸内細菌へ影響はないのだろうか? 米国マサチューセッツ大学の研究チームは、動物実験により、ある種の保存料は腸内細菌叢を混乱させるが、それは一過性のものであり、やがて回復することを発見したという。
食品保存料は、無害であると考えられてきたが、そこには「潜在的な相互作用を考える上での決定的な科学的相違」があり、私たちの腸内の何百種もの細菌に影響するかもしれない、と栄養細菌学者のセラ氏らは述べている。
セラ氏の研究チームは、食品保存料の一種・ポリリジン(ε−ポリリジン)の影響について、マウスを用いて実験を行った。彼らの予想に反し、ポリリジン化合物は腸内細菌の多様性を一時的に混乱させたものの、この変化は一過性のものであり、研究期間であった15週間のうちに腸内細菌叢は回復し、元の状態と同程度に戻った。このことはマウスの性別に関係なくみられたという。
セラ氏は「これは私たちの知る限り、確認されていなかった非常に興味深い現象です。さらにこれを調べていきたいと思います。保存料が腸内細菌叢にどう影響するかについては、まだ十分に分かっていないのです。食物は私たちの身体だけでなく、腸内の善玉菌にも栄養を与えるのです」などとしている。
食品科学者や細菌学者の間では、まだ研究の進んでいない腸内細菌や、それらに栄養を与える「プレバイオティックな」食物への関心が高まっている。腸内細菌は、身体の役に立つ成分を作ったり、他の何百もの善玉菌仲間の一部を助けたりしている。
今回の実験開始から終了まで、マウスの餌には継続的にポリリジンを入れていたにもかかわらず、腸内細菌の変化は5週目くらいから始まったが9週目には元通りになっていたという。
「通常は、腸内細菌は抗菌剤を投与されてもどうにか生き延びるでしょう。私たちの研究結果は、食品保存料への順応性があることを示唆しています。このことは、食品保存料を使用する食品メーカーや抗菌剤への耐性のについて研究している人たちにとって興味深いものとなるでしょう」とセラ氏は話している。
出典は『npj食品の科学』。 (論文要旨)
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