(これは、第1期中期計画の食品成分有効性評価及び健康影響評価の研究成果の一部です。)

いわゆるダイエット食品は、若年女子のみならず、幅広い年齢層の女性にとって 強い関心を集めている。ここではガルシニアカンボジアの体重減少、体脂肪蓄積抑制 効果の可能性について、これまでの知見をまとめてみた。  有効成分(-)-ヒドロキシクエン酸の効果が期待出来るのは、高炭水化物、低脂肪の かなり特殊な食事条件のように思える。一方で、ラットで精巣毒性が発現したことか ら、充分な安全性が判明するまでは摂取を控える方が賢明と思われる。





ダイエット食品素材ガルシニアの有効性および安全性

齋 藤 衛 郎、荻 野 聡 美(国立健康・栄養研究所 食品機能研究部)


1. はじめに

肥満は、体脂肪の過剰な蓄積により体重が増加し、体型が乱れることから、肥満抑制を標榜するいわゆるダイエット食品は、若年女子のみならず、幅広い年齢層の女性にとって強い関心を集めている。しかし一方で、肥満は、そうした身体的特徴の変化ばかりでなく、内臓脂肪型肥満では、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、冠動脈疾患、高血圧などの生活習慣病を高率に発症し、これら疾病の重大な危険因子にもなる[(1,2,3]。従って、肥満予防は生活習慣病予防の観点からも大変重要である。このことは、男性においてもダイエット食品が関心を集める理由の一つになる。もし、抗肥満作用を持つ食品ないし食品素材が有効であるなら、それは生活習慣病予防に役立つ。

 近年、種々のダイエット食品ないし食品素材が登場してきているが、それらは、機能性の面から1)糖質や脂質の消化・吸収を抑制する 、2)脂肪が合成されて体内に蓄積するのを防ぐ、3)体内に蓄積された脂肪の酸化・分解を促進する、4)セロトニン等のホルモン作用を変化させて食欲を抑制する、の4つのカテゴリーに大きく分類出来る。ここで紹介するガルシニアは、効果が認められる場合には、後述するように、主に2)、一部3)と4)の作用によると考えられる。


2.ガルシニア抽出物


 ガルシニアカンボジア(Garcinia cambogia)は、その乾燥果皮抽出物に多量に含まれる(-)-ヒドロキシクエン酸((-)- Hydroxycitric acid、HCA)を有効成分とし、肥満抑制を標榜する食品素材として多くのダイエット食品やサプリメントに利用されている。

 ガルシニアカンボジアはインドや東南アジアに生育するオトギリソウ科の植物で、マンゴスチンと類縁である。常緑の中・高木で5?9月頃にオレンジ大の大きさで、黄色からやや赤みがかった実をつける。果実は皮が薄く、縦に深い溝がある。インドでは「ゴラカ(Goraka)」、「タマリンドマラバー(Tamarind Malabar)」などとも呼ばれている。ガルシニア属の果実や果皮は柑橘類に似た強い酸味を有し、熟果は果物として生食されるほか、果皮や実は乾燥させて貯蔵し、カレーの酸味付けや魚の塩蔵保存などにも用いられ、長年にわたりスパイスとして利用されている。


3.HCAの化学構造特性


 1965年、Lewisら[4]により、ガルシニアカンボジアの乾燥果皮から酸味成分であるHCAがラクトン体として単離された。ガルシニア属には多くの種類があるが、インドやマレー半島で果物として広く食されているGarcinia atroviridisとGarcinia indicaにもHCAが含まれることが同時に確認されている。HCAは、クエン酸と類似した構造を有し(図1)、ATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase, EC 4.1.3.8 )を競合阻害する[5,6]。ヒドロキシクエ ン酸は分子内に不斉炭素を有するため4つの異性体が存在するが(図1)、ATPクエン酸リアーゼの阻害効果を持つのは(-)-ヒドロキシクエン酸(HCA)のみである[7]。HCAは、カルボキシル基と水酸基をもつオキシ酸であり、分子内に環状のエステルを作りラクトン化する(図2)[4,8]。ラクトン化は、pH、温度に依存し、pH4?5で最も起こりやすい。ラクトン体は、塩基性pH下では加水分解により開環し再びオキシ酸である遊離酸になる。ガルシニアの乾燥果皮には、HCAは遊離酸とラクトン体の両者で存在することが確認されている。


4.脂質代謝とATPクエン酸リアーゼ


 糖質(炭水化物)を食事から摂取した後は、グルコース(ブドウ糖)は、解糖系を経てミトコンドリアのクエン酸サイクル(TCAサイクル)によりエネルギーに変換される。生成したエネルギーは体が必用とするエネルギーとして利用され消費されるが、その消費量が少ない場合には、グルコースはクエン酸に変換された後、ミトコンドリアを出て脂肪合成の場である細胞質へ移行し、アセチルCoAを経由して脂肪酸そして脂肪、あるいは、コレステロールに変換され、体内に蓄積される(図3)。細胞質中のクエン酸からアセチルCoAが生成される反応を触媒する酵素が、ATPクエン酸リアーゼであり、HCAはこの酵素を競合阻害して体内への脂肪の蓄積を抑制するとされている。ATPクエン酸リアーゼが阻害されると、クエン酸量が増加することになり、結果的にグルコースからのグリコーゲン生成が高まり、血中のグルコース濃度が安定して、空腹感が抑制されることになる。


5.ガルシニアカンボジア(HCA)の生理作用(動物試験)


 遺伝性の疾患素因を持たない、いわゆる通常のラット(CD系、Wistar系、SD系)で、自由摂取によりHCAの影響を検討した結果、摂餌量の減少、体重増加抑制、体脂肪蓄積抑制効果が観察されている[9,10,11]。また、エネルギー摂取量を一定にしたペアフィーディング試験においても、HCAによる体重及び体脂肪蓄積抑制効果が観察されている[12]。体脂肪の蓄積抑制は、摂餌量の減少に伴うエネルギーの摂取低下によるばかりではなく、後述するように、HCAによる糖質からの脂肪合成抑制によるものであることは、エネルギーの摂取量を一定にしたペアフィーディング試験から明らかである。

 一方、遺伝性の肥満モデルであるZucker肥満(fa/fa)ラットと、そのやせ型(Fa/-)を用いてHCA投与による体組成および脂肪組織に与える影響を自由摂食で比較すると、いずれもHCAにより摂食量の低下、体重増加の抑制が観察された。このとき、やせ型では、HCA投与により脂肪細胞数とサイズの低下が観察されたが、肥満では、脂肪細胞数は低下するもののサイズに差は見られなかった[13]。また、エネルギー摂取量を一定にしたペアフィーディング試験においては、やせラットではHCA投与により脂肪細胞数とサイズが低下し、体脂肪蓄積抑制効果が見られたが、肥満ラットでは脂肪細胞数はやや低下するものの、サイズは大きく、HCAによる体脂肪蓄積抑制効果は得られなかった[13]。HCAは、脂肪前駆細胞の増殖抑制による脂肪細胞数の増加を抑制しているのかもしれない。体脂肪蓄積抑制効果が得られなかったことに対するクリアな説明はなされていないが、肥満(fa/fa)ラットではその肥満になりやすい体質素因、すなわち、脂肪組織におけるリポタンパク質リパーゼ活性が高く、循環血液からの脂肪の取り込み活性が大変高いこと[14,15),16]、脂肪組織に取り込まれた脂肪酸から脂肪を合成するアシル-CoAシンセターゼ活性が高いこと[17]、等の理由があげられるであろう。なお、摂食量の低下(食欲抑制)は、Zucker肥満(fa/fa)ラットを用いているので、レプチンを介したものではないと考えられる。また、視床下部腹内側核(VMH)破壊ラットやゴールドチオグルコースを投与して視床下部腹内側核(満腹中枢)を破壊したマウスでもHCAによる食欲抑制がかかることが報告されているので[18]、HCAによる食欲抑制のメカニズムはこれら以外の作用によるものと考えられる。近年、フェンフルラミンと類似の作用による中枢神経ニューロンのシナプスからのセロトニン放出の促進と再取り込みの抑制がHCAによる食欲抑制のメカニズムとして提案されている[19,20]。


6.HCAの作用機序


 HCAの作用機序を図4に示す。HCAはATPクエン酸リアーゼをアロステリックに競合阻害する[5,6]ことで、クエン酸からのアセチルCoA生成を抑制し、糖からの脂肪酸合成と脂肪合成が抑制される[12,21,22,23,24,25]。HCAのATPクエ ン酸リアーゼに対する親和性はクエン酸に比べ約100倍程度強く[5]、ある程度の濃度のHCAが細胞内に存在するとATPクエン酸リアーゼが阻害されクエン酸を基質とした脂肪合成が抑制される。一般的に、アセチルCoA生成が減少すると脂肪酸の燃焼に抑制的に働いているマロニルCoAの濃度も低下し、その結果、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)の活性化とともに脂肪酸の燃焼(β-酸化)が促進され、体脂肪蓄積が抑制されることになる [26,27]。従って、高炭水化物食では、余剰の糖分が脂肪酸合成に向けられるのを抑制し、体脂肪の蓄積が抑制されることになる。糖質からの分解により生成するクエン酸量の増加に伴い、結果的に肝臓でグルコースからのグリコーゲン合成の促進[23,26,28]、クエン酸からアセチルCoA生成の低下によるコレステロール生合成低下[23, 25]、マロニルCoA濃度の低下による脂肪酸と脂肪合成の低下により血漿TG濃度の低下[10,22]、エネルギー消費の増加[11,29]などがHCAの効果として報告されている。


7.ガルシニアカンボジア(HCA)を用いたヒトでの効果確認試験


 動物試験の結果を基に、種々の角度から、ヒトでもガルシニアカンボジア(HCA)の効果確認試験が幾つか実施されているが、効果があるとするものと、効果が得られないとするものがあり、必ずしもコンセンサスは得られていない。

 Sergio[30]は、著者自身の摂取経験として、HCA含量20?30%のタマリンドマラバー(Tamarind Ma1abar)を1日3回毎食事前に1gずつ摂取し、食欲の抑制と1日あたり約1ポンドの体重減少を経験している。ThomとAndrews[31]は、軽度肥満から肥満(BMI27.5-44.5)までの健康成人を対象として、1日1200kcalの低エネルギー・低脂肪食と運動との組み合わせにHCAを含有するCitrisan®を8週間摂取させ、その効果を検討した( 学会要旨なのでHCA摂取量、摂取方法等に関する具体的記載がない)。その結果、HCA摂取群で食欲の抑制とともに、体脂肪の減少による体重の低下、総コレステロール及び血圧の低下を観察している。澤田ら[8]は、健常男女にHCA250mgを食事の30分?1時間前に1日3回、8週間摂取させたところ、開始時と比べ、錠剤型のHCAカルシウム塩(図2)を摂取した者で平均0.4kg強、水溶性ガルシニアエキスの錠剤型あるいはドリンクを摂取した者ではいずれも1kg強の体重減少を観察している。後2者は有意な減少であった。水溶性の方がカルシウム塩よりも効果が高いようである。小野村ら[32]は、平均BMIが26.5の健常女性(33?67歳)にHCAを250mg含むゼリー飲料を食事の30分?1時間前に1日3本、12週間摂取させたところ、プラセボ群と比較して、体重、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積、総脂肪面積が有意に減少したことを観察している。Mattes とBormann[33]は、軽度肥満(平均BMIが28.6)の健常女性(18?65歳)に食事の30分?1時間前にHCA 400mgを1日3回、低エネルギーの1,200kcal/dの食事とともに12週間摂取させたところ、プラセボ群と比較して体重が有意に減少したことを観察している。しかし、食欲に関連する指標には両群間に差は観察されず、HCAには食欲抑制効果は無いと結論づけている。Hayamizuら[34]は、平均BMIが27.9の健常男女(平均36.8歳)に1,000mgのHCAを1日3回に分けて、食事前に8週間摂取させたところ、プラセボ群と比較して内臓脂肪面積値の高い被験者(≧90cm²)でのみ、内臓脂肪面積及び内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比が有意に減少したが、体重、BMI、体脂肪率には有意な変化は認めなかった。 Westerterp-PlantengaとKovacs[35]は、平均BMI が 27.5の健常男女(平均37歳)に300mgのHCAを含む飲料を1日3回、2週間摂取させた。摂取のタイミングは、昼食と夕食の1時間前と夕食 2時間後とした(HCA摂取60-90分後が血中HCAの濃度がピークになり、3時間後には血中から消失するとの報告を根拠にこのタイミングを 選択)。その結果、食欲には変化がなかったが、24時間のエネルギー摂取がHCA群で15?30%減少した。主に間食の時間におけるエネル ギー摂取の抑制効果(HCAによる満腹感の維持効果)によると推察されている。HCAの効果を効率的に引き出すためには、摂取のタイミング が重要であろう。

 一方、RothackerとWaitman[36、学会要旨]は、BMIが27?33の健常人(大半は女性)にHCA400mg、カフェイン50mg及びピコリン酸クロム 40µgを含む市販カプセルを食事の30分?1時間前に1日3回、低エネルギーの1,200kcal/dの高繊維食とともに6週間摂取させたが、プラセ ボ群と比較して有意な体重減少は見られなかった。Heymsfieldら[37]は、BMIが約32の 健常人(大半は女性で18?65歳)にHCAを500mg含むカプセルを食事の30分前に1日3回、低エネルギーの1,200kcal/dの高繊維食とともに 12週間摂取させたが、やはり、プラセボ群と比較して、体重及び体脂肪量いずれにも有意な変化を観察しなかった。Kriketosら[38]は、平均BMIが 29.1(22.4?37.6)の健常男性(22?38歳)にHCA1.5gを朝と夕に計3gを3日間、典型的な欧米の食事である脂肪エネルギー比30?35%の 食事とともに摂取させた。同時に最大酸素摂取量の40%の運動を30分間と60%の運動を15分間の計45分間の運動を負荷する被験者も設けた 。一夜絶食後、エネルギー消費と呼吸商(RQ)を測定したが、プラセボ群と比較して、運動の有無に係わらず、エネルギー消費、RQ いずれにも変動はなく、また、関連の血液生化学的指標にも変化は観察されなかった。典型的な欧米食の下で、しかも短期間では、 HCA、運動いずれも、エネルギー消費には影響しないようである。Kovacs[39]らは、平均BMI が27.4の健常男性(平均年齢47歳)にHCA500mgあるいはHCA500mgと中鎖脂肪酸トリグリセリド3gを通常の食事とともに2週間摂取させ、食 欲、脂肪の酸化、エネルギー消費、体重減少に対する影響を検討したが、プラセボ群と比較して、いずれの測定項目にも有意な差は観察さ れなかった。なお、脂肪の酸化(RQの測定)とエネルギー消費は、被験者がヒューマンメタボリックチャンバーに36時間滞在して測定して いる。van Loonら[40]は、平均年齢が 24歳、平均体重73kg(平均BMIが22.1)の自転車競技選手に、HCAを平均4.4gずつ4回、最大運動強度の50%の運動を負荷する45分と15分前 、運動開始後30分と60分後に摂取させたが、脂肪と炭水化物の酸化速度にプラセボ群と比較して有意差を観察しなかった。ただし、血漿乳 酸値は30分後のみHCA摂取群で有意に低値を示したが、60分以降は差が見られなかった。この試験では、1日だけではあるが、計18g弱もの 多量のHCAを摂取させており、血漿中のHCAの濃度は運動開始120分後、最大平均0.39mmol/Lまで上昇している。


8.HCAの体内消長

 3人の男性にHCA4.4gを単回摂取させ、その後3.5時間に渡って血漿中のHCA濃度の変化を測定した結果、60?90分後に最大(0.39± 0.02mmol/L、82.0±4.8mg/L)となり、その後、徐々に減少した[40]。この結果は 、HCAが消化管から吸収され、血液を介して循環系に入り、標的臓器に到達してその効果を発現することを示唆している。Loeら[41]は、男性3人、 女性1人にHCA2gを摂取させ、その後3.5?4時間に渡って血漿中のHCA濃度の変化を測定した。その結果、4人のうち3人は2時間後に最大 (4.7?8.4mg/Lの濃度範囲)となり、HCA摂取後30分から2時間までの濃度の変化は、0.8?8.4mg/Lの範囲であった。その後、減少したが、 4時間後も開始30分後の濃度よりもかなり高い濃度に維持されていた。男子1人は、3時間後に濃度のピークを迎えており、ヒトにより吸収 やクリアランス速度に違いがあるようである。ベースラインに戻るまでの経時変化を測定した報告は見あたらないが、6時間程度はかかる と思われる。


9.安全性についての検討


 ガルシニアについては、2.の項でも述べたように、東南アジアにおいて果物やスパイスなどとして長年にわたり利用されて来ており、 食経験上安全性に問題は無いと考えられている。また、これまで、動物試験、ヒト試験いずれにおいても有害事象が観察されたとする報告 は見あたらない。しかし、当初から安全性を目的として動物試験によりそれを証明したデータに欠け、特に長期摂取による影響は明らかで ない。

 ラットを用いた経口投与による急性毒性試験では、HCAを含むSuper CitriMax™(HCA含量は60%)のLD50は5,000 mg/kg BW以上[20]、マウスを用い た腹腔内投与によるHCAのLD50は2,000mg/kg BW以上、経口投与では4,000mg/kg BW以上[18]とされており、安 全性は高いと考えられている。さらに、健常人でガルシニア多量摂取の安全性を検討する目的で、HCAとして計4gを毎食前に3回に分けて 1日間摂取させた場合、及び、HCAとして計3gを毎食前に3回に分けて10日間連続摂取させた場合、いずれも、有害事象は観察されなか ったと報告されている[42]。

 しかし、我々は、水溶性のガルシニアカンボジア(ガルシニアパウダーS®)の肥満抑制、体脂肪蓄積抑制効果についてZucker肥満ラット で検討している過程で、ガルシニアの多量投与により精巣が萎縮し、精巣毒性を発現することを見いだした。現在それらの結果を報告する 準備を進めているので、詳細は後日公表したい。また、別のグループによりガルシニアカンボジア中のHCAのカルシウム塩(ガルシニアパ ウダーCR®)を用いた試験でも、同様な精巣毒性の結果がFischer 344ラットで観察され、既に厚生労働省からそれらの詳細が公表されてい る(http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0304-1.html)。その詳細については、報告書を参照されたい。現在、毒性の本体の究明、 毒性量との関係等について検討が続けられている。

 ガルシニアを含有するいわゆるダイエット食品は、錠剤やカプセルの形態で、また、お茶や清涼飲料水に混合するなどして多種類販売さ れている。こうした食品は、ダイエット効果を強く期待して摂取目安量を大幅に超えて摂取する可能性があること、また、錠剤やカプセルの形態では高濃度に含有されていることから、容易に大量摂取することが出来ること、さらに、ダエットを志向する不特定多数のヒトが摂取し、しかも、摂取対象者の中には、感受性の高いヒト、低いヒト等その分布は多岐に渡ると考えられる。広い視野でこうした点を考えると、精巣毒性の可能性を否定出来ない現在、充分な安全性が判明するまでは摂取を控えることが賢明と思われる。詳細が判明次第、順次、情報提供を続けてゆきたい。


10.まとめ


 ガルシニアカンボジアの体重減少、体脂肪蓄積抑制効果の可能性について、これまでの知見をまとめてみた。効果が得られるケースとしては、高炭水化物、低脂肪の極端な食事条件と、摂取のタイミングとして、HCAの体内濃度がピークとなるHCA摂取ほぼ1時間?2時間後に食事を摂取することが糖質からの脂肪合成抑制効果を引き出しやすいと考えられる。しかし、一方で、ヒトでも精巣毒性の可能性が残されている。こうしたサプリメントは、摂らなければならないものではない。充分な安全性が判明するまでは摂取を控えることが賢明と思われる。


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<本プロジェクト課題の研究成果掲載論文1>
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http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=PubMed&cmd=Retrieve&list_uids=15680676&dopt=Abstract


[目的]
抗肥満食品は有効であれば生活習慣病予防に役立つことが期待できる。 ガルシニアは東南アジアでは広く食品の貯蔵や風味付けに使われている が、近年では、ダイエット用の素材としても利用されている。ガルシニ アには(-)- ヒドロキシクエン酸((-)- Hydroxycitric acid、HCA)が多 量に含まれ、HCAには食欲抑制と体脂肪蓄積抑制効果のあることが動物 実験において報告されている。HCAによる体脂肪蓄積抑制はATP-クエン 酸リアーゼ活性を競合阻害することで脂肪の合成を抑制する作用に基づ いている。本研究は、これまでその効果が明らかとなっていないZucker 肥満(fa/fa)ラットを用いてガルシニアカンボジア(Garcinia cambogia)の体脂肪蓄積抑制効果の検討と、多量摂取における安全性の 検討を目的とした。


[方法]

HCAを0,10,51,102,154mmol/kg diet含むようにガルシニア抽出エキス( 日本新薬ガルシニアパウダーS;HCAとして41.2%の含量、遊離型:ラク トン型=36.6:63.4)をAIN-93Gを基本とする飼料(脂質含量50g/kg diet、トータルエネルギーの11.4-11.5%)に混合し、154mmol HCA /kg diet群(G1)に対するペアフィーディングで各群(G2-G5)6匹として6 週齢の雄のZucker肥満(fa/fa)ラットを約3ヶ月間飼育した。ペアフ ィーディングを行った理由は、HCAは食欲抑制を介して摂食を抑制する という報告[1,2,3,4]に基づいた。解剖の際には、前日に摂取した量の 3/4量の餌を投与し、翌日心臓採血により解剖した。肝臓、腎臓、脾臓 、精巣、副睾丸脂肪組織を直ちに摘出し、等張食塩水で洗浄、重量を測 定した。肝臓と脾臓と精巣についてはpH7.4の10%ホルマリン緩衝液で 固定し、H.E.染色による病理組織学的検査を行った。血清及び血漿は 2700xg15min、4℃で遠心分離し、分析用の試料とした。


[結果]
食餌摂取量は一日当り平均14.7-15.1gであった(Table1)。


HCA最大投与群(G1、154mmol HCA/kg diet)において、軽度ではあるが 、有意な副睾丸周囲脂肪の蓄積抑制が観察された(Table2)。しかし、 102mmol HCA /kg diet以上を含む飼料を摂取した群(G1とG2)で精巣重 量の低下が見られ、その重量は他の群(G3からG5)の約半分であった( Table2)。


また、H.E.染色による精巣の病理組織学的検査を行ったところ、精細胞 の萎縮と変性が観察された(Fig1CとD)。その変性は用量依存的であり 、HCA最大投与群で最も顕著であった(Table3)。しかし、セルトリ細 胞とライディッヒ細胞は、いずれのHCA投与群でも形態学的な異常所見 は認められなかった。精巣の病理組織学的変化はG3からG5群では見られ なかった(Table3)。

肝臓では、脂肪空胞化によって判断される脂肪蓄積が全ての群で観察さ れたが、その他には異常所見は観察されなかった。脾臓にはガルシニア 摂取による病理組織学的異常は見られなかった。精子形成に関連するホルモンの変化を見ると、血漿中テストステロンと LHの濃度に有意な差はなかった(Table4)。血漿中インヒビンBの濃度 はG3からG5の3群よりも、HCA最大投与群と次の群(G1とG2)で有意に 低く、また、FSHの濃度は有意に高かった(Table4)。

[考察]
 HCA最大投与群の副睾丸脂肪組織で軽度ではあるが有意な脂肪蓄積抑 制効果が観察された。この群では、ATP-クエン酸リアーゼ活性が低い傾 向にあることから(Table2)、HCAの多量投与が、効果は弱いながら、 ATP-クエン酸リアーゼ活性の低下を介して脂肪酸合成を抑制し、脂肪の 生成と蓄積を抑制した一つの要因と考えられる。しかし、他の群にはこ うした効果はみられず、Zucker肥満ラットと同様な体脂肪蓄積性の高い 脂質代謝の特性を持つ人々では、ガルシニアエキスの体脂肪蓄積抑制効 果は殆ど期待できないと考えられる。ヒトのATPクエン酸リアーゼ活性 は低く、グルコースからのアセチルCoA生成はラットの約1/40とされる ため[5]、極端な高炭水化物、高HCA、低脂肪食という食事を別にすると 、ヒトでHCA摂取による体脂肪蓄積抑制効果は一層得られにくいと思わ れる。
 HCAを含むガルシニアカンボジアエキスの精巣毒性に関する論文は出 されておらず、現時点ではこの毒性の本体が何であるかは明らかとなっ ていない。本研究で用いたガルシニアカンボジアパウダーSは市販のい わゆる健康食品の成分として使用されているものであり、重金属や環境 汚染物質等の有害物質による影響は除外できる。仮に毒性の本体をHCA と考えると(非公式には、そうした報告が国立医薬品食品衛生研究所の グループから出されている)、毒性の閾値は51及び102mmol HCA /kg dietの間にあり、そのレベルがNOAEL(無毒性量)と考えられるが、本 試験の結果からは51mmol HCA/kg diet(389mgHCA/ kg BW/d)がNOAELと なる。市販されているガルシニアカンボジアエキスを含むいわゆる健康 食品の1日当りのHCAの有効摂取目安量(750-1500mg HCA /d per person)[6,7]は、体重50kgでは15-30 mg HCA/ kg BW/dとなり、この量 は、ここで得られたNOAELの1/26?1/13量となる。摂取の指示量を守れ ば有害な影響は起こらないだろうと思われる。しかし、ガルシニアカン ボジアエキスを含むいわゆる健康食品は種々の形態で販売されており、 錠剤タイプでは簡単に摂取目安量の数倍を摂取することができる。ヒト ではレスポンスの個体差も大きく異なると考えられる。従って、少なく とも、体脂肪蓄積性の高い脂質代謝の特性を持った人々には効果はほと んど期待できないので、摂取はひかえた方が賢明であろう。なお、精巣 関連ホルモンのレベルを測定すると、テストステロンとLHには変化はな いが、インヒビンBが低下し、FSHが増加していることから、精巣のセル トリ細胞の機能低下と精細胞の変性との関連が示唆される。こうした点 については、現在更に検討を進めているので、明らかとなった段階で公 開したい。


[結論]
 HCA含有ガルシニアカンボジアエキスの多量投与(154mmol HCA/kg diet)は雄のZucker肥満(fa/fa)ラットで副睾丸周囲脂肪蓄積抑制に 効果があったが、HCAとして102mmol HCA/kg diet(778 mg HCA /kg BW/d)以上を含む飼料を摂取した場合に、顕著な精巣毒性が観察された 。しかし、51mmol HCA /kg diet(389mg HCA /kg BW/d)では毒性は観 察されず、このレベルがNOAELと考えられた。


[引用文献]
1. Greenwood, M.R.C., Cleary, M.P., Gruen, R., Blase, D., Stern, J.S., Triscari, J., Sullivan, AC., 1981. Effect of (-)-hydroxycitrate on development of obesity in the Zucker obese rat. American Journal of Physiology 240, E72-E78.  7457600

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<本プロジェクト課題の研究成果掲載論文2>
Kiyose, C., Ogino, S., Kubo, K., Takeuchi, M. and Saito, M.
Relationship between Garcinia cambogia-induced impairment of spermatogenesis and meiosis-activating sterol production in rat testis.
J. Clin. Biochem. Nutr., in press, 2006



[目的]
 我々は、前回の報告で、Zucker肥満ラットにガルシニア・カ ンボジアパウダーを(-)-ヒドロキシクエン酸((-)-HCA)量とし て、 0, 10, 51, 102, 154mmol/kg dietをそれぞれ3ヶ月間 与えたところ、102と154mmol/kg dietのグループで、精巣にの み、毒性(精巣重量の低下、精細胞の変性)が認められた[1]。しかし、なぜガルシニアを摂取すると精巣特異 的に毒性が発現するかは明らかになっていない。そこで本研究 では、精巣中のコレステロール中間体に着目した。コレステロ ール合成系の中間体のひとつである、4,4-dimethyl-5α -cholesta-8,24-diene-3β-ol (testis meiosis-activating sterol; T-MAS)は雄牛の精巣から、また4,4-dimethyl-5α -cholesta-8,14,24-triene-3β-ol (follicular fluid meiosis-activating sterol, FF-MAS)はヒト濾胞液中からそれ ぞれ単離同定された[2]。これらはラノステロールからラノステロール14α -ジメチラーゼ(CYP51)の作用によってFF-MASが、またFF-MASか らステロールΔ14-レダクターゼによってT-MASがそれぞれ産生 される。これらの物質が精巣や濾胞液中に特異的に蓄積されて いることから[3]、卵母細胞や精母細胞の減数分裂を開始するシグ ナル物質ではないかと推察されている[4] 。そこで本研究では、ガルシニア摂取による精子 形成阻害とMAS物質の産生との関連について検討することにし た。


[方法]

 3週令Fischer344系雄ラットにAIN-93G配合を基本とした精製 飼料を与えた。5日間予備飼育した後、対照群とガルシニア摂 取群に分け、さらにそれぞれの群内で、2週間飼育群と4週間飼 育群に分け、合計4群で実験をスタートさせた。ガルシニア摂 取群の飼料中には(-)-HCA量として、餌1kgあたり102mmolに なるように添加した。飼育終了前日に前々日の摂食量の75%量 を与えた。飼育終了後解剖を行い、血清ならびに肝臓、精巣を 採取し、分析に供した。


[結果]
 飼育2週間で、体重はすでにガルシニア摂取群で統計学上有 意な低下がみられたが、摂食量には違いは見られなかった。ま た、4週間後においても、摂食量には違いは見られなかったが 、体重はガルシニア摂取群で有意な低下が認められた。精巣重 量もガルシニア摂取群で対照群と比較して有意な低下が認めら れた(表1)。その時の精巣を病理組織学的に検査したところ 、ガルシニアを4週間摂取させた群で、精子形成障害、精細胞 の変性が認められた。


精巣関連ホルモンをみると、血清中LHおよびテストステロン 濃度はガルシニア摂取による顕著な変動は見られなかったが、 インヒビン-Bはガルシニア摂取によって有意な低下が認められ 、またFSHの有意な上昇も見られた(表2)。


精巣中FF-MAS濃度およびT-MAS濃度に関しても、摂取2週間後 においては、ガルシニア摂取によって、FF-MASは有意に、また 、T-MASも低下傾向が見られた。摂取4週間後では、FF-MAS、 T-MASともガルシニア摂取によって有意な低下が認められた( 図1)。

[考察]
 本研究では、高濃度のガルシニア摂取による精子形成の障害 とMAS物質の産生とのかかわりについて検討を行った。まず、 精子形成障害のマーカーとして、4つの精巣関連ホルモン(イ ンヒビン-B、テストステロン、FSH、LH)を測定した。その結 果、ガルシニアを摂取するとインヒビン-Bが有意に低下し、こ れによってフィードバック作用をうけて、FSHの上昇が見られ た。Pierikらはインヒビン-Bと精子形成のマーカーとの関連に ついて報告しており[5]、これによると血清中のインヒビン-Bレベルと精液 濃度、精子数や精巣の大きさは正の相関があると述べている。 またインヒビン-BとFSHは負の相関があることも示している。 このことは他の研究者たちも報告していることから[6,7,8]、インヒビン-Bはセルトリ細胞の機能と精子形成の マーカーとなり、インヒビン-Bの低下とFSHの上昇は精子形 成障害を示唆していると考えられる[9]。従って、ガルシニア摂取によるインヒビン-Bの 上昇とFSHの低下は精巣毒性の中で、特に精子形成障害を示し ており、この生化学的データは病理組織検査の結果によっても 裏付けられている。
 では、なぜガルシニア摂取によって精子形成障害がおこるの だろうか?我々はコレステロール生合成の中間体である、 FF-MASとT-MAS、コレステロールの変動に着目した。その結果 、ガルシニア摂取によって精巣中のFF-MAS、T-MAS量が有意に 低下したが、コレステロールについては有意な差が見られなか った。これは、ガルシニア摂取によって、ATPクエン酸リアー ゼが競合阻害を受けることで、アセチルCoA生成が抑制され、 FF-MAS、T-MASの蓄積が阻害されたものと推察される。コレス テロールに関しては、精巣中のコレステロール含量は2つの MAS物質量に比べて遥かに大量であることから、それほど影響 を受けなかったのではないかと推察される。これらの結果より 、コレステロールよりもMAS物質の方が精子形成にとって必須 な役割がある可能性が示唆された。


[結論]
 ラットにおけるガルシニアの高濃度摂取による精巣中の精子 形成障害は、MAS物質の蓄積阻害により、減数分裂のシグナル 伝達が抑制された結果による可能性が示唆された。


[引用文献]
1. Saito, M., Ueno, M., Ogino, S., Kubo, K., Nagata, J.. and Takeuchil, M. 2005. High dose of Garcinia cambogia is effective in suppressing fat accumulation in developing male Zucker obese rats, but highly toxic to the testis. Food.Chem.Toxicol., 43, 411-419

2. Byskov, AG., Andersen, CY., Nordholm, L., Thgersen, H., Guoliang, X., Wassmann, O., Andersen, JV., Guddal, E., and Roed, T. 1995. Chemical structure of sterols that activate oocyte meiosis. Nature, 374, 559-562.

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<本プロジェクト課題の研究成果掲載論文3>
Kiyose, C., Kubo, K. and Saito, M.
Effect of Garcinia cambogia administration on female reproductive organs in rats.
J. Clin. Biochem. Nutr., in press, 2006



[目的]
 我々はこれまで、高濃度ガルシニア摂取の影響として現れた精巣毒性 発現のメカニズムを解明する目的で検討を行ってきた。その結果、ガル シニア摂取によって発現する精巣毒性は、精巣の中で、特に精子形成の 障害であり、これは、精母細胞の減数分裂のシグナル物質ではないかと 推察されているmeiosis-activating sterol (MAS)物質の蓄積が低下す ることによるものではないかと推測し、報告した[1,2]。 このように、雄ラットを用いてガルシニア摂取の影響をみた研究はいく つかあるが、雌ラットへの影響を検討したものはほとんどない。
 雌ラットの性周期は4?5日と非常に短いため、卵巣関連ホルモンの変 動が著しい。従って、性ホルモンを検討する場合、性周期が一致した上 で判断する必要があると思われる。そこで、本研究は性周期が一致した 雌ラットを用いて、ガルシニア摂取による影響について検討することに した。


[方法]

 性周期が一致した7週令SD?IGS系雌ラットを5日間予備飼育し た後、対照群とガルシニア摂取群((-)-ヒドロキシクエン酸量として 154mmol/kg diet)にわけ、さらに各群2週間摂取群と4週間摂取群にわけ 、合計4群で開始した。飼育期間中毎日膣インピーダンス法にて性周期 の状態をチェックし、各群飼育終了週の発情前期に腹部大動脈より採血 し、肝臓、左右の卵巣、子宮、腹腔内脂肪を素早く採取した。血清中各 種ホルモン、卵巣と子宮の病理組織学的検査、卵巣中FF-MAS、T-MASの 測定を行った。


[結果]
 終体重、摂食量、各種組織重量をみたところ、2週間飼育後では、摂 食量で有意な差は見られなかったものの、終体重はガルシニア摂取群の 方が対照群よりも低下が見られた(表1)。4週間摂取後においても同様 な結果が得られた。腹腔内脂肪量を見てみると、摂取2週間後ですでに ガルシニア摂取群で有意な低下が見られたことから、体重の減少は腹腔 内脂肪の減少による可能性が推察された。


 卵巣関連ホルモンとして、血清エストラジオール、プロゲステロン、 LH,FSHの各濃度を測定した。その結果、すべてのホルモンともガルシ ニア摂取群と対照群とで有意な差は見られなかった(表2)。その時の 卵巣及び子宮を病理組織学的にみたところ、両組織とも顕著な変化は見 られなかった。


また、卵巣中FF-MAS、T-MASを測定したところ、2週間摂取グループ、 4週間摂取グループとも対照群とガルシニア摂取群の間で有意な差は見 られなかった(図1)。


[考察]
 本研究は、雌ラットでガルシニア摂取による影響について検討を行っ た。通常、ラットの性周期は休止期、発情前期、発情期、発情後期に分 けられ、一サイクルが4?5日と非常に短い周期である。この性周期の間 、各種ホルモンは複雑に変化している[3,4,5]。従っ て、グループ内でデータを一致させるためには性周期を一致させる必要 がある。膣インピーダンス法は発情期の前後で膣粘膜の性質が変わるこ とを利用した測定法で[6]、発情 前期を見きわめることが可能である。そこで、この方法を用いて、発情 前期に統一して、採血・解剖を行った。
 血中エストラジオール濃度は他の卵巣関連ホルモンに比較して、発情 前期でピークが高くなることが報告されている[5]。我々 の結果も、他の3つのホルモンに比べてエストラジオール濃度が高くな っていた。しかし、対照群とガルシニア摂取群で有意な差は見られなか った。卵巣および子宮の病理組織学的検査でも顕著な変化が見られなか ったことから、4週間という短期間においてはガルシニア摂取による卵 巣などの生殖器への影響は見られなかった。
 前回の報告[2]で、コレステロール合成の中間体である、FF-MAS、 T-MASに着目し検討を行った。その結果、精巣中FF-MAS及びT-MASともガ ルシニア摂取によって有意に低下した事から、精巣毒性、特に精子形成 障害にこれらの物質が関わっている可能性を示唆した。そこで、本研究 においても、卵巣中FF-MAS、T-MAS量を測定してガルシニア摂取による 影響について検討を行ったが、両MAS物質とも対照群とガルシニア摂取 群で有意な差は見られなかった。では、なぜ雄と雌で影響の差が見られ たかということに関しては今のところ明らかになっていない。例えば、 ガルシニアに含まれている有効成分の(-)-ヒドロキシクエン酸が直接卵 巣内には入りにくいのか、また卵巣中のFF-MASを蓄積する別の合成系の ルートが存在するなどいくつか推測できるが、論証するまでには至って いない。

[結論]
 本研究は、雌ラットへのガルシニア摂取の影響について検討を行った 。その結果、摂取4週間という短期間においては、卵巣関連ホルモン類 や卵巣、子宮の病理組織学的検査とも異常が認められなかった。さらに 卵母細胞の減数分裂のシグナル物質と考えられているFF-MASやT-MASに ついても変化が見られなかった。今回は短期間での検討だったが、安全 性を考える上では、今後長期間での検討も必要であると考える。


[引用文献]
1. Saito, M., Ueno, M., Ogino, S., Kubo, K., Nagata, J.. and Takeuchil, M. 2005. High dose of Garcinia cambogia is effective in suppressing fat accumulation in developing male Zucker obese rats, but highly toxic to the testis. Food.Chem.Toxicol. 43, 411-419

2. Kiyose, C., Oghino, S., Kubo, K., Takeuchi, M. and Saito, M. 2006. Relationship between Garcinia cambogia-induced impairment of spermatogenesis and meiosis-activating sterol production in rat testis. 2006. J.Clin.Biochem.Nutr., in press.

3. Hilliard, J. 1973. Corpus luteum function in guinea pigs, hamsters, rats, mice and rabbits. Biol.Reprod., 8, 203-210.

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