糖尿病でビタミンC がなぜ足らなくなる?

■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
豊富なビタミンCで糖尿病リスクを下げる

 ビタミンCは天然の主要な抗酸化物質の一つです。

 体の中では、動脈硬化やがんなどの原因となる可能性のある活性酸素・フリーラジカルを取り除く働きがあります。

 一方、糖尿病患者では酸化ストレスが亢進し、体の中のビタミンC濃度が下がっています。ですから、糖尿病状態でなぜビタミンC濃度が下がるのか、はっきりとした仕組みを知ることは重要で、以前からも断片的に研究されていました。

 例えば、糖尿病患者でビタミンCの尿中排泄に異常がある、糖尿病モデル動物ではビタミンC合成酵素の活性が低下していることは知られていましたが、最近やっと本体が明らかになってきたビタミンC輸送タンパク(細胞膜でビタミンCの出し入れをするタンパク)や還元再生酵素(酸化されたビタミンCを元に戻す酵素)の動態についてはまだ研究されていません。

 さて、体の中のビタミンC濃度を決める因子には、口からの摂取、腸管での吸収、組織の中での酸化と還元再生、尿中排泄と再吸収、体内での合成などが考えられます。そこで、ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットを使ってなぜビタミンC濃度が下がるのか、研究しました。

 STZ 糖尿病ラットはI型糖尿病のモデルで、発症すると急激に血糖値が上がり、体重は低下し、尿量は増加します。さらに血中や組織中のビタミンC濃度が下がります。肝臓中のビタミンC還元再生酵素の活性を測定すると、活性は下がっていました。つまり、酸化されたビタミンCが元に戻らない可能性があります。それらの酵素のメッセンジャーRNAを定量したところ増えていました。

 酵素タンパクが作られていても実際に機能していないと思われます。腎臓でビタミンCの再吸収に働いている輸送タンパクのメッセンジャーRNAに変化はなかったのですが、大量の尿の中にビタミンCが出て、結果的に大量のビタミンCが失われていました。さらに肝臓のビタミンC合成酵素の活性を測定したところ非常に低くなっていました。ビタミンCが作られないのもビタミンC濃度が下がる原因の一つのようです。

 このように、ラットI型糖尿病でビタミンC濃度が下がる原因は、還元再生酵素や合成酵素の活性低下に加え尿中へのビタミンCの損失があると考えられました。

 ただ、ラットと違ってヒトはビタミンCを合成できません。ですから、ヒトの糖尿病ではビタミンCの還元再生酵素活性低下や尿中損失を考えに入れてビタミンCの摂取量を増やすことが糖尿病の合併症である動脈硬化などの予防にとって重要となるかもしれません。その検討はこれからの課題だと思われます。



出典:Impaired Ascorbic Acid Metabolism in Streptozotocin-induced Diabetic Rats. Kashiba M,Oka J, Ichikawa R, Kasahara E, Inayama T,Kageyama A, Kageyama H, Osaka T, Umegaki K,Matsumoto A, Ishikawa T, Nishikimi M, Inoue M, Inoue S: Free Rad Biol Med: 33(9): 1221-30, 2002.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第1巻3号(通巻3号)平成15年3月25日発行から転載


■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
豊富なビタミンCで糖尿病リスクを下げる