「『第七次改定日本人の栄養所要量』を

よりよくするためのアンケート調査」

実施結果について

 

調査の目的

 「日本人の栄養所要量」は健康・栄養の領域に限らず、教育や食糧生産にまで関わる非常に幅広い領域で活用されている。平成12年から用いられている「第六次改定日本人の栄養所要量」では新しい概念として食事摂取基準DRIs(Dietary Reference Intakes)という考え方が取り入れられ理論的にも整理されたものとなっている。このような中、平成13年厚生労働省では「第七次改定日本人の栄養所要量−食事摂取基準−企画検討会」が設置され、平成17年度から用いられる「栄養所要量」についての課題整理が行われた。これを受け、平成14年には独立行政法人国立健康・栄養研究所がワーキンググループを組織し、必要な情報の収集及び分析を行うこととなった。その一環として、「日本人の栄養所要量」を活用する際の問題点やニーズを把握し、新しい「栄養所要量」をよりよく活用できるものにするためにアンケート調査を実施した。

 

調査の方法

 

 アンケート調査の実施に際しては日本栄養改善学会に協力を依頼した。対象者は2002年4月16日時点で日本栄養改善学会に所属する8736名から無作為に抽出した1000名である。調査票は「第六次改定日本人の栄養所要量」及び各栄養素の所要量、「第六次改定日本人の栄養所要量−食事摂取基準−の活用」、「第七次改定日本人の栄養所要量」、食事摂取基準(DRIs)について、栄養所要量をもっと良く知ろうクイズ!!の項目から構成した。郵送法により478名より回答が得られた(回答率47.8%)(図1)。

 

調査の結果

1.対象者の特性

 アンケート回答者478名中、これまでに「栄養所要量」を使用したことがあると回答した者は425名(88.9%)であった(図2)。このうち、最もよく使用している「栄養所要量」は「第六次改定日本人の栄養所要量」で348名(81.9%)、次いで「第五次改定」49名(11.5%)、「第四次改定」10名(2.4%)であった。

 

 

 さらに「栄養所要量」を使用したことのある425名の所属施設としては、病院が最も多く110名、老人施設50名、大学・大学院46名の順に高い結果となっていた(表1)。資格免許としては管理栄養士346名、栄養士56名が多かった(表2)。

 

2.「第六次改定日本人の栄養所要量」に対する問題点及び意見

 

 「第六次改定日本人の栄養所要量」についての問題点や意見を回答者の自由記入により把握した。その結果、「第六次改定」を使用したことがある425名中184名より276項目の回答が得られた。この項目を、表3で示したように、栄養素別に‘DRIs’に関する問題及び意見、‘活用’に関する問題及び意見、‘その他’に分類すると、‘エネルギー所要量のDRIsに関する指摘項目’(15件)が多く、次いで‘たんぱく質所要量のDRIsに関する指摘項目’(10件)、‘たんぱく質所要量の活用に関する指摘項目’(10件)が多く見られた。

 

3.「第六次改定日本人の栄養所要量」について

 

 「第六時改定日本人の栄養所要量」は平成12年度から16年度までの5年間使用することとなっている。「栄養所要量」を使用したことがある425名中376名(88.5%)が「第六次改定」を活用したことがあると回答していた(図3)。

 

 このうち、最もよく用いる資料としては『第六次改定日本人の栄養所要量』224件、『第六次改定日本人の栄養所要量の活用』121件、「第六次改定日本人の栄養所要量『食事摂取基準』の取扱いについて」(通知文章)56件の順に多かった(表4)。また、活用の目的としては献立作成が最も多く180件、次いで栄養指導164件、健康・栄養教育108件の順に高かった(図4)。

1)対象特性別の活用状況と問題点の指摘

 

 「栄養所要量」を@病気の‘あり’、‘なし’、A‘個人’、‘集団’、B‘小児’、‘成人’、‘高齢者’でそれぞれ活用する場合、‘小児’に対する活用状況が低く(176件)、また、‘病者’(98件)、‘高齢者’(115件)で問題点の指摘が高かった(図5)。

2)エネルギー及び栄養素別の活用状況と問題点の指摘

 

 「第六次改定」のエネルギー所要量の考え方について、‘わかりやすい’と回答したものは282名(75.0%)、‘わかりやすくない’と回答したものは64名(17.0%)であった。また、エネルギー所要量算出方法としては、生活活動強度別エネルギー所要量をそのまま活用する方法が最も高く147名、次いで性・年齢別基礎代謝基準値を用いた算出方法が98名で多かった。さらにこれらの方法について‘使いやすい’と回答したものはそれぞれ119名、80名であった(図6)。

 

 エネルギー以外の栄養素についても、各所要量の活用状況、使いやすさ及び問題点の有無について調べた。活用状況についてはセレン(88名)、葉酸(122名)、マグネシウム(144名)、亜鉛(145名)で低かった(図7)。活用したことがあるもので、活用する際の問題点の指摘が多かったのは、脂肪酸摂取比率(32 名)、たんぱく質(50名)、β−カロテン(27名)、ビタミンA(40名)の所要量であった(図8)。さらに使いやすさについては、脂肪酸摂取比率(26名)、β−カロテン(23名)、ビタミンA(33名)で‘使いにくい’と回答するものが多かった(図9)。

4.「第六次改定日本人の栄養所要量−食事摂取基準−の活用」について

 

 『第六次改定日本人の栄養所要量−食事摂取基準−の活用』について、活用したことがあるものは247名(69.3%)であった。このうち活用しやすいと回答したものは178名(72.0%)だった(図10)。

 

 よく活用されている内容としては食事摂取基準の活用(個人・集団に対する栄養計画における所要量の活用方法について)(121件)、食品群別摂取目標量(101件)であり、栄養指導への活用(33件)、栄養状態の評価への活用(22件)についてはあまり活用されていないことが示されていた(図11)。

1)栄養所要量−食事摂取基準−に対応した食品群別摂取目標量(食品構成)について

 

 「第六次改定日本人の栄養所要量」に基づいて作成されている食品群別摂取目標量(食品構成)について活用しやすいと回答した人は152名(61.5%)、活用しにくいと回答した人は83名(33.6%)であった(図12)。活用しにくいと回答した人について、活用しにくいところとしては、食品構成の数値43件、年齢区分33件、食品群21件で大きかった。

5.「第七次改定日本人の栄養所要量」について

 

 「第七次改定日本人の栄養所要量」についての必要な情報としては、「第七次改定日本人の栄養所要量」の食品構成(180件)、「第七次改定日本人の栄養所要量」の数値の利用の仕方(162件)、「第七次改定日本人の栄養所要量」の考え方(153件)で要望が高かった(図13)。

 

 また、望まれる情報提供の方法としては、「第七次改定日本人の栄養所要量」活用についての専門書(261件)、講習会・講演会・勉強会等(257件)、「第七次改定日本人の栄養所要量」についての専門書(152件)で要望が高かった(図14)。

1)講習会・講演会・勉強会について

 

 「日本人の栄養所要量」の考え方や活用方法についての講習会・講演会・勉強会に参加したことがあるものは267名(62.8%)、これに対して参加したことが無いものは154名(36.2%)であった(図15)。不参加の理由としては業務等で忙しい52件、身近で開催されていない50件、時間がない38件で高かった(図16)。

 

 今後、講習会(講演会、勉強会)があれば参加したいですかという問いに対し、368名(85.4%)が参加したいと回答しており、勉強したい内容としては、「第七次改定日本人の栄養所要量」の数値の利用の仕方(131件)、疾病別の活用方法(130件)、「第七次改定日本人の栄養所要量」の活用(128件)についての要望が高かった(図17)。

6.食事摂取基準DRIs(Dietary Reference Intakes)について

 

 食事摂取基準(DRIs)の考え方について知っているものは338名(79.5%)であり(図18)、「第六次改定日本人の栄養所要量」における食事摂取基準の考え方については、‘十分に理解できる’、‘まあまあ理解できる’でそれぞれ4.0%(17名)、43.8%(186名)、これに対して‘わかりにくい’、‘まったく理解できない’で それぞれ14.1%(60名)、16.9%(4名)であった(図19)。

 

まとめ

 現在「第七次改定日本人の栄養所要量」策定にむけて、様々な情報の収集及び整理が行われている。このような中、実際「栄養所要量」を用いている様々な現場の人から「栄養所要量」についての意見やニーズの把握行い、これを反映させていくことは非常に大切な過程である。よって、今回、日本栄養改善学会及び会員の皆様に御協力を御願いし、「栄養所要量」に関するアンケート調査を実施した。その結果多くの方から貴重な御意見をいただくことができた。

特に、活用面については様々な問題が提起された。その一つは、所要量をどのように個々人に対応させるかという問題である。例えば、高齢者や小児については問題点の指摘が高く、所要量の年齢区分が少なく活用しにくいという意見が多くよせられている。また、高齢者ではその生活状況や運動状況が大きく異なるため、個人別には対応しにくいという意見があった。「第六次改定日本人の栄養所要量」では、“個々人に対する食事摂取基準の活用にあたっては、その個人の健康・栄養状態、生活状況等を十分に考慮することが適当である”とされおり、“個人間の差”を十分に考慮できる数値が設定されている。しかし、“個人差”に対する実際の活用方法についてはほとんど情報提供されていないという現状がある。よってこのような問題の解決方法としては個人差に対応できる活用方法の情報提供を図るとともに、所要量策定に関わる基礎データを提供して、各所要量値の数値の意味を示すことが必要であると思われる。

また、「栄養所要量」に関する講演会・講習会・勉強会等への参加希望が高いにもかかわらず、参加していない人の理由として講演会・講習会・勉強会が身近に開催されていないということを指摘する人が多く見られた。このことは対象者の状況に合わせた多様な情報提供の必要性を示している。よって今後「栄養所要量」についての情報提供を行う際、用途後外に応じたツールや教材の開発、トレーニングコースの整備、講習会等の実施を行うことが必要であるだろう。

 

謝辞

 本調査に快く御協力下さいました日本栄養改善学会事務局及び会員の皆様に厚く御礼申し上げます。